ソフトウエアビジネスモデル特許ビジネス関連発明特許

ビジネスモデル特許(その5)

 これまでにご説明したことから、ビジネスモデル特許は、基本的にソフトウエアの発明であることが、おおよそご理解いただけてきたかと思います。

 ここでは、一旦、ビジネスに関するか否かを意識せずに、ソフトウエアの発明について説明したいと思います。特許庁から出されている審査基準(附属書B第1章コンピュータソフトウエア関連発明)に解説されている例を取り上げてみたいと思います。

<例1>
 文書データを入力する入力手段、
 入力された文書データを処理する処理手段、
 処理された文書データを出力する出力手段を備えたコンピュータにおいて、
 上記処理手段によって入力された文書の要約を作成するコンピュータ。
(改行及び空白の挿入は、筆者による)

 この例1の結論は、「特許法上の「発明」に該当しない」となります。「処理手段によって入力された文書の要約を作成する」と漠然と記載されており、どのような処理を実行することによって要約を作成するのか、具体的に記載されていない、という理由によるものです。
 確かに、上記の記載のみでは、どのようなプログラムになるのか、想像することができません。話がそれますが、ときどき、発明のポイントを隠したままにしておきたいと希望される発明者とお会いすることがあります。しかし、独占排他的な権利である特許権を付与してもらうためには、ある程度、具体的に記載する必要があります。

<例2>
 複数の文書からなる文書群のうち、特定の一の対象文書の要約を作成するコンピュータであって、
 前記対象文書を解析することで、当該文書を構成する一以上の文を抽出するとともに、各文に含まれる一以上の単語を抽出し、
 前記抽出された各単語について、前記対象文書中に出現する頻度(TF)及び前記文書群に含まれる全文書中に出現する頻度の逆数(IDF)に基づくTF-IDF値を算出し、
 各文に含まれる複数の単語の前記TF-IDF値の合計を各文の文重要度として算出し、
 前記対象文書から、前記文重要度の高い順に文を所定数選択し、選択した文を配して要約を作成するコンピュータ。

 この例2の結論は、「特許法上の「発明」に該当する」となります。この例2の場合には、まず、文書から単語を抽出して、頻度の逆数からTF-IDF値を出して、文重要度を出して・・・と、プログラムを作った経験があれば、どんな処理によって要約を作成しようとしているか、おおよそ想像できます。ただ、現実としましては、日本語の場合には、どうやって、単語を切り分けて抽出するのかな?と。おそらく形態要素解析とかを使うんだろうけど、単語の切り分け方によって結果が変わってくるしな、などと要らぬことを考えてしまいますが。  あと、特許的な留意点としまして、これだけで、特許になるわけではありません。あくまでも、「特許法上の「発明」に該当する」と判断されただけです。以前、ご説明したように、新規性及び進歩性という要件を満たさないと、特許にはなりません。「特許法上の「発明」に該当する」と判断されることは、とりあえず、特許性の判断の土俵に上がることができたということを意味し、さらなる勝負が続きます。

 今回の2つの例の比較から、ビジネスモデル特許以前に、ソフトウエアとして、どのような処理をしようとしているのか、ある程度は具体的に記載していないと、まずは、相手にもしてもらえないということがおわかりいただけたでしょうか。